【2026年最新】イラン紛争とホルムズ海峡封鎖がエンジンオイル市場に与える3つのリスク
はじめに:ホルムズ海峡とエンジンオイルの切っても切れない関係
2025年、イランをめぐる中東情勢は新たな局面を迎えています。米国とイランの間で断続的に繰り広げられる外交的緊張、イスラエルとの武力衝突リスク、そしてイエメンのフーシ派による紅海での商船攻撃。これらの複合的な危機は、世界のエネルギー市場に深刻な影響を与え始めています。
「でもエンジンオイルに何の関係があるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。実は、エンジンオイルと中東情勢は非常に密接な関係にあります。今回はその仕組みを徹底的に解説し、日本のカーオーナーが今知っておくべきリスクをわかりやすくお伝えします。
【店長コメント】みなさんこんにちは、TAKUMIモーターオイルの店長です!最近ニュースを見ていると、毎日のように「中東情勢」という言葉が出てきますよね。正直、うちのショップにもお客様から「オイルが値上がりしますか?」「今のうちに買っておいたほうがいいですか?」というお問い合わせが増えてきています。今回はそんな不安にしっかりお答えするために、かなり詳しく解説したいと思います。長文になりますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです!
ホルムズ海峡とは?世界のエネルギーを握る「咽頭部」
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾(アラビア湾)とオマーン湾を結ぶ幅わずか34kmの狭い水路です。地図上ではとても小さな存在に見えますが、その経済的重要性は計り知れません。
国際エネルギー機関(IEA)の2024年データによると、この海峡を通過する石油は1日あたり約1,700〜1,800万バレルに達します。これは世界の海上石油貿易量の約20〜21%、世界の石油消費量全体の約17%に相当します。サウジアラビア・イラク・イラン・クウェート・UAE・カタールの6カ国から輸出される石油の大部分がこの海峡を経由しており、特に日本は原油輸入の約90%を中東に依存していることから、その影響は甚大です。
また、液化天然ガス(LNG)についても世界輸出量の約17%がホルムズ海峡経由とされており、電力・ガスといったエネルギー全般への影響も無視できません。
ホルムズ海峡の地政学的重要性の歴史
ホルムズ海峡の重要性が世界に認識されたのは、1973年のオイルショックがきっかけです。中東産油国がOAPECによる石油禁輸措置を発動したことで原油価格が4倍に跳ね上がり、日本を含む先進国経済に深刻な打撃を与えました。その後も1979年のイラン革命、1980年代のイラン・イラク戦争(タンカー戦争)、1990年の湾岸戦争と、中東情勢はエネルギー価格に繰り返し大きな影響を与えてきました。
2019年にはイランの革命防衛隊がホルムズ海峡付近で英国タンカーを拿捕する事件が発生し、原油価格は一時的に10%超上昇しました。このように、「情勢が緊迫化するだけで」原油価格が大幅に変動するのがホルムズ海峡リスクの特徴です。
【店長コメント】私がこの業界に入ったのが2000年代初頭なんですが、当時から「中東で何かあると原油価格が上がる」というのは業界の常識でした。でも正直、ここ数年の緊迫度合いはそれ以前とは比べ物にならないくらい高まっていると感じています。特に2024年末からのフーシ派による紅海攻撃は、ホルムズ海峡ではなく紅海(スエズ運河ルート)への直接攻撃でしたが、これによってタンカーが迂回ルートを余儀なくされ、輸送コストが大幅に上昇しました。エンジンオイルのメーカーとして、こういった動向は本当に注視せざるを得ません。
リスク①:原油価格の急騰によるエンジンオイル値上がり
エンジンオイルの主原料はベースオイルであり、その多くは原油から精製されます。具体的には、原油を蒸留・精製して得られる潤滑油基油(ベースオイル)がエンジンオイルの基材として使われます。
原油価格とエンジンオイル価格の相関について、過去のデータを見てみましょう。2022年2月のロシア・ウクライナ紛争勃発時、WTI原油先物価格は1バレル76ドルから最高130ドル近くまで急騰しました(約71%上昇)。この価格上昇の影響はベースオイル市場に約2〜4週間のタイムラグで伝播し、最終的にエンジンオイルの小売価格は平均15〜30%上昇しました。
ホルムズ海峡が完全封鎖された場合のシナリオについて、国際エネルギー機関(IEA)および米国エネルギー情報局(EIA)の分析では「短期的に1バレル150〜200ドル以上への跳ね上がりも想定される」とされています。2024年末時点で1バレル70〜80ドル台で推移していた原油価格が仮に150ドルに達した場合、エンジンオイルの価格は40〜60%上昇する可能性があります。
日本市場への具体的な影響試算
日本の乗用車用エンジンオイル(4リットル缶、一般的な全合成5W-30)の平均小売価格は2025年現在で3,000〜5,000円程度です。仮に原油価格が現在の2倍になった場合、この価格は4,500〜7,500円程度まで上昇する計算になります。年間2回オイル交換する一般的なドライバーの場合、年間コストは6,000〜10,000円から9,000〜15,000円に増加します。
【店長コメント】「40〜60%の値上がり」って聞くとビックリしますよね。でも実は2022年にはそれに近い値上がりが実際に起きたんです。私のところにもお客様から「TAKUMIさんの値段も上がりますか?」という問い合わせが殺到して、本当に大変でした。そのときの経験から、私たちは今より在庫管理と原料調達の安定化に力を入れています。「いざというとき、価格を抑えてお客様にお届けできる状態を作っておく」というのが今の最重要課題のひとつです。
リスク②:合成油・添加剤の原料供給不足
全合成エンジンオイルに使われる高機能ベースオイル(PAO:ポリアルファオレフィン、エステル類など)は、石油化学産業の副産物として製造されます。PAOの原料となるαオレフィン(1-デセン等)はエチレンから製造されますが、エチレン自体は原油や天然ガスの精製過程で得られます。
つまり全合成油も、原料をたどれば石油・天然ガスに行き着くわけです。ホルムズ海峡封鎖による原油・LNGの供給不足は、鉱物油だけでなく合成ベースオイルの原料にも影響を与えます。
さらに重要なのが添加剤です。エンジンオイルの品質を決める添加剤(摩耗防止剤・酸化防止剤・清浄分散剤・粘度指数向上剤・流動点降下剤など)の多くは、有機化学化合物であり、その原料の一部は中東・アジア圏から調達されています。特に亜鉛系摩耗防止剤(ZDDP:ジアルキルジチオリン酸亜鉛)の原料となる亜鉛化合物の一部は、中東・アジア方面からの供給に依存している部分があります。
世界の添加剤メーカーの動向
世界の潤滑油添加剤市場は、インフィニウム(英国)、ルーブリゾール(米国)、シェブロンオロニア(米国)などの大手数社が寡占状態にあります。これらのメーカーの原料調達は世界中に分散されていますが、中東情勢の悪化による化学品の輸送コスト増加は、添加剤のコストアップを通じてエンジンオイル価格に影響します。2024年には一部添加剤の価格が前年比20〜30%上昇したとの業界報告があります。
【店長コメント】添加剤の話って、あまり一般の方には馴染みがないかもしれませんね。でも実はエンジンオイルの性能の大部分は添加剤で決まるんです。全体の15〜25%程度が添加剤成分なんですよ。その添加剤の原料が不足したり高騰したりすると、「ベースオイルは確保できたのに添加剤が足りなくて製品が作れない」という事態も起こり得る。私たちもこのリスクを真剣に考えて、添加剤の在庫確保を進めているところです。
リスク③:輸送コスト増大と迂回ルートの影響
ホルムズ海峡の通行が制限・封鎖された場合、タンカーは代替ルートを選択せざるを得ません。主な迂回ルートには、アフリカ南端の喜望峰回りルート(ホルムズ海峡経由より約6,400km長い)と、サウジアラビアのパイプライン(東西パイプライン)経由ルートがありますが、後者はサウジアラビアからの輸出に限定されます。
喜望峰回りルートを使用する場合、航行日数は約2〜3週間延長され、燃料費・人件費・維持費などの追加コストが発生します。2024年にフーシ派の攻撃を避けるためにスエズ運河を避けたタンカーが喜望峰回りを選択した際、タンカーの運賃(スポットレート)は一時的に3〜4倍に跳ね上がりました。この輸送コスト増加は最終的に製品価格に転嫁されます。
日本の石油備蓄と緩衝機能
日本は石油備蓄法により、国家備蓄と民間備蓄を合わせて約200日分の石油を備蓄しています。仮にホルムズ海峡が短期間封鎖されても、この備蓄により国内供給の即時途絶は防げます。しかし備蓄は原油が中心であり、精製された石油製品(エンジンオイル等)の備蓄は限定的です。また備蓄の取り崩しにはコストが伴い、価格上昇の抑制効果は限定的です。
【店長コメント】「日本には備蓄があるから大丈夫でしょ」という声もよくいただきます。確かに短期的な供給途絶は備蓄でカバーできます。でも価格の話になると話は別なんです。備蓄を取り崩すコスト、迂回ルートの追加コスト、さらに「足りなくなるかも」という心理的な要因による投機的買いが重なると、実際の供給量が変わらなくても価格だけがどんどん上がっていく。コモディティ市場の怖いところはここなんですよね。
今後の情勢見通し:専門家・機関の分析
2025年の中東情勢について、主要な国際機関・シンクタンクはどのような見通しを示しているでしょうか。
国際エネルギー機関(IEA)の2025年エネルギー市場見通しでは、「中東の地政学的リスクは石油市場における最大の不確実性要因のひとつ」としながらも、「現時点ではホルムズ海峡の完全封鎖は考えにくく、部分的な混乱シナリオが現実的」と評価しています。
米国エネルギー情報局(EIA)の短期エネルギー見通し(2025年初頭版)では、2025年の原油価格(WTI)を75〜85ドル/バレルの範囲で予測していますが、「中東情勢の急変によって上振れリスクは常に存在する」と明記されています。
野村証券・三菱UFJリサーチ&コンサルティングなど国内金融機関のレポートでも、イラン核合意を巡る交渉の行方、米国の対イラン制裁の動向、フーシ派への対応をめぐる国際協調の見通しなどが、2025〜2026年のエネルギー価格を左右する主要因として挙げられています。
日本のカーオーナーが取るべき対策
こうしたリスクに対して、日本のカーオーナーはどのような対策を取ればよいでしょうか。まず定期的なオイル状態の確認を習慣化することが重要です。価格が上がる前のタイミングでの適切な交換・在庫確保ができます。次に全合成油への切り替えを検討することも有効です。交換インターバルが延びることで、価格上昇時のトータルコストを抑えられます。また国内製造・安定供給ブランドを選ぶことも大切です。サプライチェーンが安定したブランドを選ぶことで、供給途絶リスクを軽減できます。さらに燃費改善も重要です。適切なオイル管理による燃費改善で、ガソリン価格上昇の影響も一定程度緩和できます。
まとめ:リスクを知って、賢く備える
ホルムズ海峡封鎖リスクがエンジンオイル市場に与える影響は、①原油価格急騰によるベースオイル高騰、②合成油・添加剤原料の供給不足、③輸送コスト増大による価格転嫁という3つのルートで現れます。
「すぐに大変なことになる」と過度に心配する必要はありませんが、「全く関係ない話」でもありません。エネルギー問題を身近な問題として認識し、適切なオイル管理と賢い購入計画を立てることが、地政学リスクが高まる時代のカーライフの知恵です。
TAKUMIモーターオイルでは、こうした時代においても皆様に安定した品質・価格でオイルをお届けできるよう、原料調達の多角化・在庫管理の強化に取り組んでいます。ご不安な点があればいつでもショップにご相談ください。
【店長より最後に一言】長い記事を最後まで読んでくださって本当にありがとうございます!中東情勢というと難しいイメージがありますが、要は「遠い国の出来事が、自分の車のメンテナンスコストに直結している」ということなんですよね。だからこそ私たちは、皆さんのカーライフを守るために、日々原料調達と品質管理に真剣に向き合っています。これからも一緒に乗り越えていきましょう!
【記事監修・執筆】TAKMOカープロテクションズ(旧TAKUMIモーターオイル)公式通販ショップ 店長。エンジンオイル業界歴20年以上。国内外の潤滑油メーカーや原料サプライヤーとの深いネットワークを活かし、日々最新の市場情報を収集・分析しています。エンジンオイルに関するご質問・ご相談はお気軽にショップまでどうぞ。